ニート、泥縄をちょっと太くすること

 前回は、ショップへの売込みを強化したいがために、ネオンテトラを繁殖させ、それによってこちらが単なる素人ではないことをアピールする作戦を立てたことを述べた。今回は、この作戦を遂行するに当たってどのようなことを行ったかについて述べる。
 最初にお断りしておくが、この”ネオンテトラ作戦”によって、私は確かに取引先のショップさんを増やすことができた。しかし、今考えるにどのショップさんに対しても有効であるとは思わないし、もっと良い方法もあるだろう。あくまでも、私が述べていることは90年代の一つの点景として捉えていただきたい。ただ、これを読んで下さっている皆さんの中で、もしもたとえ副業にしろ、熱帯魚ブリーダーを考えていらっしゃるのなら、コリドラスやプレコなどを主力としてやっていこうと思っていても、やはりネオンテトラのような繁殖難魚と言われているものを増やしてみるのは決して無駄ではないと言える。
 さて、私はネオンテトラの繁殖に挑戦するとは決めたものの、グッピーとコリドラスしか繁殖させたことがなかったので、いきなりトライするのも気が引けた。そこで、練習としてゼブラダニオとグローライトテトラの2種を繁殖させてみる事にした。すでに下宿ではステルバイもアドルフォイも日々成長しているのであるから、売り先を第一に探すべきなのであり、とんでもなく悠長であると言えるのだが、そんなことには目を瞑れるほどニートの興味は転々とするのである。
 ゼブラもグローライトテトラも繁殖は簡単であると聞いていたので、増やすことには楽観的であった。そこで、私はここに至って初めて商売らしいことを考えた。つまり、コストパフォーマンスを計算したのである。種親の育成はコリドラスと同居なので除外視して、繁殖に用いる30cm水槽にかかる電気代、ブラインシュリンプ代、水道代などはトータルで大体一ヶ月で1000円ほどである。労働単価は練習なので除外すれば、産卵から出荷まで3ヶ月を想定すると一本の水槽で3000円が損益分岐点となる。私は取引をしてくれているショップさんたちにゼブラとグローライトテトラを100匹2000円、つまり1匹20円で卸す約束を取り付けたので、一水槽で150匹繁殖をさせることができればプラマイ0となるわけである。ちなみに、生後3ヶ月のゼブラとグローライトは共に本来の単価はもっと安いので、ショップさんたちは完全にボランティアであった。
 このようにして、私は初めてブリーダーらしい繁殖をすることになった。今思い返しても、このとき協力してくれたショップさんたちには本当に感謝してもし足りないと思う。確かに、ゼブラとグローライトテトラなど商売にならない魚なのでお遊びと言ってしまえばそうである。しかし、このときに経験した小さな水槽でなるべく多くの魚を取るという技術の習得は私がブリーダーを続けていく上でかけがえのないものとなった。そうした意味ではお遊び以上のものであった。また、この技術は後に私がアルタムエンゼルの繁殖に成功したときに大きく役に立ったのである。次回は、ゼブラとグローライトテトラの繁殖について述べたいと思う。

この項を読んで繁殖に興味をもたれた方には以下の本がお勧めです。
熱帯魚繁殖入門 / 東 博司

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